やがて書きあぐねし凡情

=今日も何もなかった=

美しすぎる歌人の名刺を入手!

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かつて中原綾子(1898-1969)という「美人すぎる歌人」がいました。この人が昭和34年に出版した詩集「灰の詩」という本を古本屋から取り寄せたところ、本の中に綾子自身の名刺が挟まれていたので少し得した気分になれました。

名刺の片隅に「謹呈」の金文字がありますから、どなたかに贈られた本ということなのでしょう。貰った側は本に目を通すことなく事務的に書棚にしまい込んだのかもしれません。 たしかに美貌の歌人とはいえ、このとき綾子は既に61歳、しかも極めて私的な内容の詩集ですから、綾子個人に興味のない人には無用の長物だったのでしょう。

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思わぬ形で手にしたこの名刺は、古いものだけにいろいろと興味を惹かれることがあります。たとえば電話番号ですが、都心の渋谷区なのに局番は(37)と僅か 二桁です。しかも市外局番はなく、そこには「淀橋」と書かれています。 理由を調べたところ、当時市外電話は直通がなく、交換手を通じて「○○局の ××××をお願いします」と告げて繋いでもらっていたらしいのです。既に東京タワーも完成していたというのに、まだ市外局番がなかったんですね。

そして「灰の詩」の方ですが、この中に「昼顔の花」という詩が収録されています。概要はこんな話です。 未知の死刑囚から綾子に手紙が届きます。そこには、自作の短歌をみてほしいと書かれていました。綾子は、その歌の感想を書き添えた返事を出します。そうして 何度か手紙のやりとりをしているうちに、死刑囚の歌は上達していきます。 そんなある日、彼から仙台にいくことになったという手紙が届きます。そこは刑場 のある刑務所です。綾子は意を決して小菅の刑務所に会いにいきます。しかし死刑囚は既に前日そこを後にしていたのです。

 

歌人 中原綾子

歌人 中原綾子

 

 詩をそのまま掲載できないのが残念ですが、刑務所に向かう途中の心理描写がとても巧みです。7月の初旬のとても暑い日とありますから、強い日差しの下、和服姿の綾子が日傘をさして歩く姿が目に浮かんできます。

当時の気象データを収集して、はたしてこの日7月の何日だったのかを特定しようと、私はひそかに目論んでいます。