やがて書きあぐねし凡情

=今日も何もなかった=

恋人を守る命は何個あるのか

驚きました。米国のトランプ米大統領が大相撲夏場所千秋楽を観戦する予定に合わせて、日本相撲協会が正面升席をすべて確保しているというのですから。これは、第二次世界大戦敗戦後GHQによって接収された国技館がメモリアルホールと改称されて以来の米国による国技館支配ともいえる出来事です。

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土俵の大きさまで変えさせられる

敗戦国というのは、あらゆる屈辱に耐えなければいけないようで、GHQから本場所開催許可の一つの条件として「土俵を広げろ」という指示で、土俵の直径が15尺(4.55m)から16尺(4.8m)に変更させられたこともありました。もっとも、これはいろいろと不都合があったようで、結局1場所で元の15尺に戻っています。

 現在でも敗戦国としての扱いがある

そんなエピソードも遠い過去の出来事だと思っていると大きな間違いです。現在でも日本は連合国軍の敵国として、法的に位置づけられていることをご存知でしょうか。それは著作権保護に関する事項です。 

日本においては、長年作者の死後50年までを著作権の保護期間 として定めていましましたが、TPP11協定の発効日により、2018年12月30日からは、死後70年が著作権の保護期間となりました。 

たとえば藤田嗣治さんのケースでみていきましょう。藤田さんは1968年に亡くなられていますから、1969年1月1日から起算して、これまでは50年後の2018年12月31日まで保護されるとされていました。しかしTPP整備法による著作権法の改正により70年後の2038年12月31日まで保護されることになりました。 

このように著作権の保護期間の70年というのは国際基準ともいえる期間です。ところが、米国、英国、フランス、カナダその他の国々に対しては、さらに約10年の保護期間が延長されているのです。

このルールは、サンフランシスコ平和条約15条の規定に基づき、日本が連合国軍に対して負う義務として課せられているためです。このため著作権法上は、いまだに日本は、反連合国として扱われているのです。

このような措置を「戦時加算」といい、連合国軍 に参加した各国が日本に「戦時加算」を要求すればそれを無条件で受け入れなくてはいけないとされています。まさに無条件降伏を強いられるのです。そのため、各国はこぞって「戦時加算」を求めてきました。ところが、不思議なことに同じ敗戦国であるドイツやイタリアに対しては、各国とも「戦時加算」を求めていないのです。このため、この措置をとられているのは、世界でただ一か国、日本だけという特異な図式になっています。

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 文化庁は苦慮

この問題について、文化庁はホームページにおいて、QA形式で次のような見解を示しています。

(質問)

戦時加算の対象となる著作物の保護期間は,70年に加えて戦時加算分が保護されるのですか。

(答)

法的には,保護期間70年に加えて戦時加算分が保護されることとなります。我が国は,戦時加算義務を定めるサンフランシスコ平和条約上の権利義務を法的に変更することは現実的には困難であることも考慮し,戦時加算問題の現実的な打開に向け,TPP交渉においては,我が国が戦時加算義務を負っている国(米国,カナダ,ニュージーランド,オーストラリア)の各政府との間で個別に文書で,

(1)戦時加算問題への対処のため,権利管理団体と権利者との対話を奨励すること

(2)必要に応じて,これらの対話の状況及び他の適切な措置を検討するため,政府間で協議を行うこと

を確認しています(TPPを離脱した米国との間では,平成30(2018)年4月に,改めて文書で確認しています)。また,日EUEPA交渉においても,関係国(英,仏,蘭,ベルギー,ギリシャ)との間で同様の文書による確認を行っています。この文書によって,権利管理団体の取組及びそれを政府間で後押しすることを通じて,対象国において戦時加算分については権利行使しないという対応が期待され,問題の現実的な打開に向けた一歩となっています。

 このように、各国と面倒くさい協議を重ねていかないと、この問題は解決しないということになります。

もっとも他の国が無償で使用できる著作物を日本だけは10年我慢して著作権料を支払えばいいだけの話ですから、実生活においては、ほとんど支障ありません。死後70年経過した外国の作家の作品なんて、ほとんど読むこともありませんからね。 

しかし世界で唯一「戦時加算」の適用を受けている国家が日本だという点は大いに気に障るところではあります。

このように著作権は、国際的なルールとして定着しています。その意味では、itunesでもっぱら洋楽を買い求めている私は、ずいぶんと「連合国」にお金を支払っているということになります。米国にはテイラー・スイフト、英国にはアデル、加国にはカーリー・レイ・ジェプセンがいますからね。 

マチネの終わりに

マチネの終わりに

 

 愛する人に捧げる命はいくつあるのか

そんな私も若い時代には、日本のレコードをずいぶん買い求めていました。では、なぜ日本の曲を聴かなくなったのかといえば、すべては歌詞に原因があります。 

ひとつは、今販売されている曲のおそらく95%以上は、私よりも年下の作詞家によるものだと推されるからです。人生経験の浅い若造の言うことに耳を傾けたくないという思いがあります。 

もうひとつは、歌詞そのものの劣化です。「翼ひろげて、同じ空の下、君を守りたい」とステレオタイプの歌詞がとことん鼻につきます。「君を守るためならこの命さえも惜しくない」と歌っておいて、数カ月で不倫が発覚する人もいます。「君の命は、いったいなんぼあるんや」とつい関西弁で突っ込みたくなるほど、言葉が軽い。 

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 洋楽の歌詞は立派なのか

それなら洋楽はどうなのかということですが、ためしにテイラーの「You Belong With Me」をみてみましょう。 

 

That what you're looking for has been here the whole time

If you could see that I'm the one who understands you

あなたを理解できるのは私だけなのよ。分かってる?

そんな女がすぐ近くにいるのよ。ここに。 

Been here all along, so why can't you see?

あなたにふさわしいのは私なのよ。分かってる?

 

こればかりは、すみませんと頭を下げるしかありません。歌詞のレベルは日本とほとんど変わりませんね。いやむしろ低俗かもしれません。でもなぜ受け入れるのか。それは私に英語のヒアリング能力がないということにつきます。リアルタイムに意味を介することができないので、純粋に曲調だけを楽しんでいられるのです。 

ある男

ある男

 

 おわりに

テイラー・スイフトは今年30歳を迎えます。余命があと70年あるとすれば、彼女の著作権の保護期間が終了するのは、140年後の2160年ということになります。その頃も戦時加算が適用されていれば、日本でテイラーの保護期間が終了するのは2170年。もはや21世紀を超えて22世紀も終盤にさしかかる頃まで著作権が保護されるなんて、まるでSF映画の世界です。

毎年のようにボーイフレンドが代わり、いまだ独身の彼女ですが、将来の彼女の子孫達は一生働かなくてもよい人生が約束されいるのです。はたしてそれが幸せなことなのかは誰にも分かりませんが……。まあ普通に考えれば幸せでしょうね。うらやましい。