やがて書きあぐねし凡情

=今日も何もなかった=

なぜ他人の背中を見る度に悔しさが募るのか

藍より青く」と聞いてNHKの朝の連続テレビ小説を連想した人は相当の年配ということになります。1972年に真木洋子・主演で放映されたこのドラマの内容はまったく記憶にありません。考えてみれば学校に行っている時間ですからね。

この「藍より青く」という言葉は、「青は藍より出でて藍より青し」という故事からきたもので、青色の染料は藍から取るが、原料の藍よりも青いことから、 弟子が師よりも優れていることのたとえで用います。

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男の嫉妬心は怖い

スポーツや囲碁将棋の世界では、弟子が師匠に勝つことを「恩返し」ともいいますが、弟子の成長を喜ぶ反面、正直口惜しさもあるでしょうね。私などはサラリーマン時代、出世が遅かったので、どんどん後輩に追い抜かれました。最高10歳年下の上司に仕えたことがありますが、もちろん気持ちの良いものではありません。後輩を「さん付け」で呼んだり、肩書を付けて呼んだりするのは、かなり屈辱的だったと記憶しています。そんな気持ちになったのは、心のどこかに嫉妬心が宿っていたからだと思います。 

keynuu773.hatenablog.com嫉妬心というのは女性の代名詞のように使われていますが、実は男の嫉妬心ほど質の悪いものはありません。このため、夫婦でも、妻が夫を追い越すと悲劇が生まれます。

 映画「スター誕生」での嫉妬心

レディ・ガガが主演して話題になった「アーリー・スター誕生」では、人気者だった男性歌手が、ガガの演じる無名歌手を見出してデビューさせますが、やがて女性歌手の方が世間から評価されるというストーリーです。二人は結婚したものの、男は周囲からちやほやされる妻に嫉妬してアルコール中毒になります。

今は亡きホイットニー・ヒューストンは、現実の世界でそうなりました。歌手のボビー・ブラウンと結婚したものの、主演した「ボディカード」の成功でますます評価が高まるホイットニーとの格差に嫉妬したボビーは次第に暴力をふるうようになります。

ホイットニーの名曲はこうして生まれた

そのホイットニーの代表作と言えば「ボディガード」の主題歌となった「I Will Always Love You」を挙げる人が多いでしょう。この「I Will Always Love You」にも「藍より青く」のように、弟子が師匠を追い越した秘話があります。

「I Will Always Love You」は、ドリー・パートンというカントリー歌手が作詞作曲したものです。1973年にドリー自らが歌い商業的にも成功といわれるくらいのヒット曲になっています。ドリー・パートンという人は、日本ではあまり知られていませんが、かつてオリビアが歌った「ジョリーン」をヒットさせるなど、ヒットメーカーとしての才能がある人です。

ドリー・パートンを指導した男

そのドリーの才能に目をつけたのが、カントリー歌手のポーター・ワゴナーです。当時42歳の彼は、22歳のドリーとデュエットをしてヒット曲を出します。その後もワゴナーはドリーのプロデューサー的役割をしながら、デュエット曲を何曲もヒットさせていきます。 

しかし年を追うごとにドリー単独の仕事が評価され始めます。一方でワゴナーの感性には衰えが目立つようになってきます。そしてドリーが28歳のときにワゴナーからの独立を決断するのです。その際にワゴナーに捧げたのがこの「I Will Always Love You」です。 

そう思うと、単に男女の別れ話ではなく、別れざるを得ない切なさが込められた歌詞だということがよく分かります。歌詞を紹介しましょう。


Dolly Parton - I Will Always Love You - 1974

I Will Always Love You (いつまでもあなたを愛している)

 If I should stay     

もし私がここにいるとしたら

I would only be in your way  

あなたしか選べない

So I'll go but I know         

だから私は行く でも分かっているの

I'll think of you every step of the way

私があなたのことばかり考えることは

And I... will always love you, ooh

そして いつまでもあなたを愛するの

Will always love you         

いつまでもあなたを愛する

You      

あなたを

My darling, you...

愛する人

Bittersweet memories –   

苦くて甘い思い出

That is all I'm taking with me.        

それだけを持っていく

So good-bye.      

さよなら

Please don't cry.

お願い 泣かないで

 We both know I'm not what you, you need  

もうお互いに必要としていないことは分かっている

And I... will always love you           

そして私はいつまでもあなたを愛するの

I... will always love you     

いつまで愛するの

You, ooh            

そうあなたを

 

I hope life treats you kind

あなたが健やかに暮らせることを祈っている

And I hope you have all you've dreamed of  

あなたの夢が叶うことも

And I wish you joy and happiness  

そしてあなたが楽しく幸せであることを願っている

 

But above all this I wish you love   

でもそれ以上にあなたに愛されたい

And I... will always love you           

そして私はいつまでもあなたを愛するの

I will always love you        

あなたをいつまでも愛する

I will always love you        

I will always love you        

I will always love you        

I, I will always love you.    

You.     

Darling, I love you.          

I'll always...         

I'll always love you.           

 

ホイットニー版は、アレンジの勝利ですね。「AND」の前のあの溜めと一気に爆発させる歌唱が大ヒットの要因となったのでしょう。 

ちなみにドリー版は、1973年と1982年にカントリー部門で1位を獲得しています。ホイットニー版は、1992年にビルボード誌14週連続1位を獲得、亡くなった2012年にもトップ3入りを果たしています。 

まとめ~捨てられたワゴナーはどうなったのか

ところで、ドリーに見切りをつけられたワゴナーは、その後どうなったでしょうか。

ドリーとの関係は、やはり独立でわだかまりが生じたのか、しばらく没交渉でした。しかし1980年に和解をして、その後何度か交流があったようです。

ワゴナーは、その後もカントリー歌手として地道に活動をつづけていましたが、2007年に病のため80歳で亡くなりました。二度の離婚を経験しているワゴナーですが、最期は子どもとドリー・パートンに看取られたのですから、幸せな人生だったといえるのではないでしょうか。

朝の連続テレビ小説藍より青く」の主題歌は、本田路津子が歌った「耳をすましてごらん」でした。天国への道すがら、耳をすましてワゴナーが聴いていたのは、もちろんドリー・パートンの「 I will always love you」だったことでしょう。