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マイホームを売ったら税金はどうなるの?

不動産を売却した際の譲渡所得に対する税金は分離課税といって、給与所得や事業所得などとは区分して申告します。その一方で、マイホームの売却で譲渡損失が発生すれば、他の所得と合算して確定申告ができるのです。不動産の売却をした際、どのように確定申告をすればいいのか、詳しくみていきましょう。

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 譲渡所得って何?

そもそも不動産を売却した際の「譲渡所得」とは何でしょうか。譲渡所得とは、売却で得た金額から、取得に要した費用等を差し引いた金額で、次の数式によって算出します。

譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)

取得費は、対象の不動産を購入したときの代金で当時の仲介手数料を含みます。ただし建物の代金については、減価償却費相当分を減額することになります。

譲渡費用とは、今回の取引で要した次のような費用です。

  1. 仲介手数料
  2. 土地を売却するために必要な測量費等
  3. (大家の場合)貸家の売却に伴い支払った立退料
  4. 更地にして売却したときの建物解体

取得費はどうやって計算するの?

取得費は、次の選択肢の内金額の大きい方を採用します。また不動産の取得金が不明であれば、2を採用します。 

  1. 不動産の取得代金とその取得に要した諸経費の合計。ただし建物の減価償却費を差し引きます。
  2. 譲渡価額の5%相当額

ここで少し複雑なのが、建物の減価償却費です。これは次の数式によって算出します。

建物の減価償却費=建物購入代金×0.9×減価償却率×経過年数

 建物の減価償却率は建物の構造によって異なってきます。また賃貸マンション等の事業用かマイホーム等の非事業用かによって異なってきます。これをまとめたのが、次の表です。

構造

非事業用(マイホーム等)

事業用(賃貸マンション等)

耐用年数

償却率

耐用年数

償却率

木造

33年

0.031

22年

0,046

軽量鉄骨造

40年

0.025

27年

0.038

鉄筋コンクリート

70年

0.015

47年

0.022

 たとえば15年前に、建売住宅を5千万円で購入したとします。内訳として、土地代が3千万円、木造2階建ての住宅が2千万円だったとすれば、取得費は次のような結果になります。

2千万円×0.9×0.031×15年=8,370,000円……建物の減価償却

5千万円-8,370,0000円=41,630,000円……取得費

この不動産が6千万円で売れたとすれば、譲渡所得はどうなるでしょうか。譲渡手数料が250万円だとした場合、次のような結果になります。

6千万円-(41,630,000円+250万円)=15,870,000円…譲渡所得

単純に当時の不動産価格だけの差であれば1千万円ですが、経年によって家の価値が下がったために、手数料を加えても税務計算上の利益がアップすることになります。

ところで売却しようとする不動産の内訳で、当時の建物の代金が分からない場合はどうすればいいのでしょうか。

建売住宅等のように土地と一体で購入して、売契約書から建物の金額が判然としない場合は、消費税額に着目してください。土地は非課税であるため、契約書に記載された消費税額は建物に課せられたものです。次の数式によって、購入当時の消費税額から逆算することで、建物の金額が算出できます。 

建物価格=消費税額÷購入時の消費税率+消費税額

 たとえば売買契約書に消費税額95万円と記載されていたとします。購入当時の消費税率が5%だったとすれば、次のようになります。 

95万円÷5%+95万円=1,995万円

この計算により、当時の建物価格は1,995万円だったことが分かります。

もし消費税の無い時代に購入したのであれば、国税庁の「建物の標準的な建築価額表」に、構造別に建物の面積当たりの単価が提示されています。これを活用すれば、建物全体の価額を算出することができます。

不動産の譲渡所得はなぜ分離課税なのか

不動産の売却による譲渡所得の算出方法は分かりました。しかし他の所得と同時に確定申告をするのに、なぜ不動産の譲渡所得は分離課税なのでしょうか。その秘密は、譲渡所得に課せられる税率にあります。

 税率はどれくらい?

譲渡所得に対する税率は不動産を所有していた期間の長さによって異なってきます。不動産を売った年の1月1日時点で不動産の所有期間が5年を超えていれば、「長期譲渡所得」になります。それよりも短い期間であれば「短期譲渡所得」です。

それぞれの税率は次のとおりです。 

区分

所得税

住民税

長期譲渡所得

15%

5%

短期譲渡所得

30%

9%

投機目的の過度な売買を抑制するために、短期間での取引には高い税率が課せられています。

なぜ分離課税なの?

給与所得や事業所得に課せられる所得税は、累進課税といって収入が大きくなるにしたがって税率もアップします。参考までに所得税の税率をみていきましょう。 

課税される所得金額

税率

控除額

195万円以下

5%

0円

195万円を超え 330万円以下

10%

97,500円

330万円を超え 695万円以下

20%

427,500円

695万円を超え 900万円以下

23%

636,000円

900万円を超え 1,800万円以下

33%

1,536,000円

1,800万円を超え4,000万円以下

40%

2,796,000円

4,000万円超

45%

4,796,000円

年収500万円の会社員の場合、適用される税率は20%ですが、新居を建てるためにマイホームを売却して1千5百万円の譲渡所得があった場合、もし分離課税でなければ、この年は合わせて2千万円の年収となり、たちまち40%もの高率の税率が適用されることになります。 

一時的な利益に過ぎない不動産の譲渡所得に対して、このような税率を貸すのは大きな負担だということで、不動産の売却による譲渡所得は、一般的な所得税とは切り離した分離課税という形で納めるようにしているのです。 

同様の扱いとして、退職金についても、やはり一時的な所得であるために、分離課税として申告することになっています。

マイホームの売却には特別控除制度がある

ところで、これまでマイホームの売却をした経験のある人の中には、分離課税で確定申告をした記憶がないという人もいるのではないでしょうか。その理由のひとつとして考えられるのは、マイホームを売却して譲渡益があった場合に適用できる特別控除です。

この制度は、マイホームの売却に限って最高額3千万円まで特別控除ができるというものです。これを数式で表すと次のようになります。 

課税額=(譲渡所得-特別控除)×税率 

これにより、譲渡所得が3千万円以下であれば、課税額はゼロ円ということになるのです。 

「最高額3千万円」というのは、いつでも3千万円が適用できるということではありません。たとえば譲渡所得が2千万円であれば2千万円が特別控除額になるということです。この計算上では、ゼロが最小値でありマイナスの金額は発生しません。

 住んでない家でも大丈夫?

特別控除は、対象となる物件に住んでいなくても、住まなくなってから3年を経過する年の年末までに売却すれば適用されます。 

転勤等で貸家にしているような場合でも期限内であれば、この特別控除は適用されるのです。 

ただし誰も住む人がいないからといって、うっかり解体をしてしまうと、解体の日から1年以内に譲渡契約を結び、さらには住まなくなってから3年を経過する年の年末までに売却しないと権利が消滅します。 

しかも建物を解体するケースでは、更地を一時的にでも貸駐車場にしてしまうと、この特例がまったく適用されなくなりますから注意が必要です。 

住宅ローン控除と併用はできない

とてもありがたい特別控除制度ですが、建て替えで次の住宅を建てる場合は注意が必要です。住宅ローン控除を適用する年の前後2年間は、3千万円特別控除が適用されないとされているからです。 

うっかり3千万円特別控除制度を利用してしまうと、最も節税効果の高い初年度から3年間住宅ローン控除が適用されませんから、どちらを選択するかの検討が必要です。 

共有の方法に注意が必要

マイホームを共有名義にしている場合は、共有の方法に注意が必要です。土地のみの所有者に対しては、原則特別控除が適用されないからです。 

たとえば夫が土地のみ、妻が家のみという所有区分の場合、3千万円特別控除を適用されるのは妻のみで、夫には適用されません。ただし妻が3千万円枠を使いきれなかった場合に限り、その残りの金額分の控除が受けられます。 

一方、建物を共有している場合は、夫、妻ともに3千万円特別控除が適用されます。したがって、将来共有名義の家を売却する可能性があるのなら、共有区分の方法について一考する必要があります。 

不動産を売却しても利益がないときもある

不動産を売却しても、かならずしも利益が出るとは限りません。不動産価格が右肩下がりの経済情勢であれば、購入価格よりも低い価格で売却する人が続出します。マイホームを売却して譲渡損失が出た場合は、どのように対応すればいいのでしょうか。

マイホームの買い替えであれば特例が適用される

譲渡所得は分離課税であるため、給与所得や事業所得とは分離して確定申告をします。ところが、譲渡損失が出た場合は、給与所得や事業所得から譲渡損失額を差し引くことができるのです。

 ただし、これはマイホーム限定ですから、アパートやマンションの投資で損失した場合は適用されません。また適用される年に3千万円以上の年収があった人も対象外です。

 さらに所得よりも譲渡損失が大きかった場合は、条件に適合すれば、譲渡損失の繰り越し控除を受けることができます。条件は売却する家と購入した家それぞれにあります。概要は次のとおりです。 

売却するマイホームの条件

  • 所有期間が、売却する年の1月1日時点で5年を超えている
  • 敷地面積のうち500平方メートルまでが対象

新しいマイホームの条件

  • 売却した翌年の年末までに、新しい家を住宅ローンで購入する
  • マイホームを先行取得した場合は、翌年の年末までに前の家を売却する
  • 延べ床面積50平方メートル以上の居住用
  • 住宅ローンの返済期間は10年以上で、この特例を受ける年の年末に残債がある

譲渡損失の繰り越し控除のシミュレーション

繰り越し控除は、翌年ばかりでなく、以降3年目まで適用されます。つまり最初の年を含めて最高で4回適用されることになります。

たとえば所得が500万円で譲渡損失が1,600万円あった場合だと次のようになります。

(1年目) 所得500百万円-譲渡損失1,600万=▲1,100万円を翌年に繰り越し

(2年目) 所得500百万円-譲渡損失1,100万=▲600万円を翌年に繰り越し

(3年目) 所得500百万円-譲渡損失600万=▲100万円を翌年に繰り越し

(4年目) 所得500百万円-譲渡損失100万=400万円

このケースでは3年目までは、確定申告をして納税額はゼロということになります。4年目は譲渡損失を繰り越しできますが、収支がプラスなので、確定申告をして税金を納付することになります。

 まとめ

ここまで不動産を売却した際の譲渡所得について説明をしてきましたがいかがでしたでしょうか。

不動産売却の譲渡所得は、分離課税方式であるため、給与所得や事業所得とは別の税率が適用されます。一方で、譲渡損失をすると他の所得と合算した形で確定申告をすることになるので、大きな節税効果があります。 

譲渡所得と譲渡損失のいずれのケースもマイホームの売却に関しては、特例制度が適用されますから、制度をよく理解したうえで、最善の選択をして確定申告にのぞみましょう。